Nikon D200 TAMRON SP AF90mm F/2.8 Di MACRO1:1 撮影地:神代植物園 ベゴニア susabi映画生活 最終章 新学期が始まり、夏に撮った映画をラッシュで見た。どれも切るのはもったいなかったので、できるだけつなぎ合わせた。撮影や編集にあわせて逐一台本は書き直された。アドリブで発せられた台詞も全て書き留められていた。こういう事をマメにやってくれているメンバーがいてくれるおかげで、アフレコなどその後の作業も順調だった。暑い夏に演じた内容が映像となって再現され、映像となった自分たち姿をみんなで笑いながら見届けて、声が吹き込まれていった。 そのころ並行して音楽の準備が進められていた。Nが選曲した音楽を中心に編集にあわせて音をかぶせていった。クラシックから、アクションにあわせたビートの聴いた曲まで、音楽に疎い私の世界を軽く超えていた。知らない曲がほとんどだったのでまるでこのために作曲したのではないかというぐらいそれぞれのシーンのイメージを印象づけた。それでもNは不満だった。曲がまだまだ足りなかったのだ。思い通りの選曲にも限界を感じていたようだ。 すると今までの撮影でも目立つことのなかった女の子が「こんな感じでどう?」と言いながら、横にあったピアノを弾いた。きれいなメロディだった。「そうそう、こういう感じの曲がほしかったんだ。これ何の曲?」とNの顔がほころんだ。「ん~、いま、なんとなく思いついたの」。その子は絶対音感を持っていた。Nが口ずさむとそのまま曲になった。ついにはオープニングからエンディングまで彼女のピアノが加えられていった。こうして、クラスの中の知られていない才能が次々と映画に投入されていったのだ。 部活動をやりくりしながら、編集が繰りかえされた。この学校は6時には完全下校しなければならないので、わずかな時間を惜しみなく費やして編集作業を行った。いよいよ文化祭まで残りわずかになった。これからは教室を映画館に仕上げていかなければならない。それはGが指揮をした。看板から暗幕まで段取りよく舞台が出来てきた。そして前日の試写会で、みんなで鑑賞した。感動するよりもみんなで思いっきり笑った。そして安堵と共に明日からの評判も気になった。 試写会を終えてみんな帰宅するときになって、Nが不服そうな顔をしていた。「どうした、音楽もバッチリじゃないか」というと音楽ではないのだという。「気づかないか、音がないんだよ、音が。歩く音走る音、飛び込む音もなんにもない、だから臨場感がないんだよ。今まで気づかなかった、そんな簡単なことに・・・」私もはっとした。やってる本人たちは、撮影時の音が耳に残っているので、そんな音がなくても勝手に頭の中で音を作っていたのだ。 そこに残っていたのはあと私とGの3人だけだった。私はもうやらずにいられなかった。3人でやろう。ここじゃ何もないから家でやろう、と我が家へ移動した。たいした目論見があるわけではなかったが、何かしたかった。後悔はしたくなかった。映写機を抱えて家に入った。 そこからはNのドラマーの腕が生きた。コップやまな板など家のものを総動員して音を作った。走る音は暗闇の中を3人で走って音を採った。プールに飛び込む音は、風呂に飛び込んだ。空が明るくなってきた。必死の思いで音を入れた。そして映像は見る見る臨場感が増してきた。 朝学校で再度試写会をした。みんな約束の時間より早く集まっていたので改めてみんなで観た。今度は拍手が沸き起こった。もう、なにも心配なく上映を始められる。 いよいよ文化祭が始まった。相変わらず演劇部の人気は高かったが、我々の映画も満席だった。看板には「キスシーン」や「女子更衣室」といった魅惑の文字が踊っていて、演劇を見終えた観客が次々と集まってきたのだ。 もちろん映画は裏切らない。キスは実際にはしていないが、そう見えるように撮ってある。女子更衣室では10人近い女生徒が下に水着をつけてはいるが、タオルで隠した肌をあらわにしている。もちろん主役の裕次郎の人気は絶大で、ちゃんとプールではお尻をサービスして黄色い歓声を浴びていた。Kはマニアックなファンを獲得した。いかにもそれっぽい女子中学生がサインをねだっていた。そして、派手な主演女優は役柄として化粧のない、あどけない本当にかわいい笑顔を振りまいていた。 毎回毎回満員御礼で、廊下に長い列が出来た。2日間観客と共に笑って映画を上映し続けた。そして最後の上映はクラスみんなが集まった。終わった。観客全員を無事に部屋から追い出すまで不思議と冷静でいた。もう上映は終わりです、と看板をはずし教室に戻った。ほっとしてなんだか真っ白な気分だった。本当にやり遂げた直後は、まだ体に緊張が残っていて、泣けないものだということをはじめて知った。 よ~し!うちあげだ~! うぉ~~! 完 制作監督:susabi この物語はノンフィクションですが、実際とは多少異なる 記述が存在することはご了承ください。 文責:susabi 著作権:susabi 20070808
by susabi2007
| 2007-08-08 14:16
| すさび映画生活
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susabi写真生活
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